地域に密着した総合電気設備会社として、70年以上の歴史を持つ株式会社鈴木電機吾一商会(福島県いわき市)は、男性が中心の業界の中で、女性が働きやすい環境づくり、キャリア支援、健康増進などを推進しています。
取り組みの背景には、社長の経験から生まれた経営哲学と、職場の快適性を常に模索する社員の姿がありました。社長の鈴木清友さん(75)と総務部総務課長の鈴木利枝子さん(39)にお話を伺いました。


■「ショックだった」屋台骨を支えた女性社員との別れ
―女性社員の健康や、働きやすさを意識したきっかけを教えてください。
鈴木社長 5年前、長年事務職として貢献してくれた女性社員が退職直後、60歳という若さで亡くなったことです。膵臓(すいぞう)がんでした。彼女は仕事から離れた後の「第二の人生」を楽しみにしていたはずで、あまりにも早すぎる別れに大きなショックを受けました。
それ以降、日頃からの健康維持、病気の早期発見などの重要性を痛感し、女性を含む社員の健康づくりに力を入れています。当社の心臓部である経理や総務は全て女性が担っており、彼女たちが一人でも欠けると会社が立ち行かなくなります。健康で、長く働いてもらうことは経営上のリスク管理として最優先事項だと考えています。
■セミナーで学んだ「女性の働きやすさ=全員の働きやすさ」
―鈴木課長が女性の働きやすさを意識したきっかけを教えください。
鈴木課長 昨年、福島県が主催する「ふくしま健康経営セミナー」を受講したことが大きなきっかけになりました。そこで女性の健康に関する話を聞き、女性に配慮した環境を整備することは全社員の働きやすさにつながると学びました。
セミナーでは、他社とのグループワークもあり、喫煙所の問題や女性社員の少なさなど、共通の悩みを持つ企業担当者と交流できました。「悩んでいるのはうちだけじゃない。小さなことから取り組めばいい」と前向きな気持ちになり、現在もハード、ソフトの両面でコツコツと改善を進めています。
■「休むな」という男性特有の業界体質から脱却
―社員は柔軟に休みを取得できるとお聞きしました。
鈴木社長 女性には有給の生理休暇制度を設けているほか、体調が悪い場合は無理せず休めるような環境をつくっています。女性には、男性が分からない特有の体調変化や悩みがあります。私から「体調は大丈夫?」と聞くのも難しいので、社員を信頼して、自己申告による休暇を認めています。
全社員に向けては、歯科、眼科などの通院も業務時間として認めて、健康を優先できるように配慮しています。子どもの行事や家庭の事情による「中抜け」も許可しており、子育て中の男性社員にも好評です。
一昔前、われわれの業界は「男の世界だから休むな」という風潮がありました。しかし、社会の変容も相まって、全体的に変化していると感じますし、当社も対応しなければいけないと思っています。
「働きやすさ」や「ワーク・ライフ・バランス」の観点では、女性社員は「残業ゼロ」で、17時には帰ります。自分の時間が確保できるので、家庭の時間を楽しむのはもちろん、料理教室などに通って自己研さんに励む社員もいます。
■事務所のレイアウトは「安心感」と「快適性」を追求
―女性社員の働きやすさを目指す取り組みをお聞かせください。
鈴木課長 東日本大震災後に事務所を移転して以降、女性社員の快適さを意識したレイアウトを採用しています。例えば以前の事務所では、トイレの配置や設備に不便を感じていました。そこで、現事務所は来客や男性社員から見えにくい場所に女子トイレを配置し、気兼ねなく利用できるようになりました。
業務のデスクに関しても、配置を工夫しています。社長の席やお客さまの通路から、女性社員の手元などが見えないようにしました。これにより「常に見られている」というストレスがなくなり、安心して業務に集中できるようになりました。
現在取り組もうとしているのは、「女性用ロッカーのカーテン」です。現状、ロッカールームを仕切るものはなく、すぐ近くに男性社員も通る動線があります。カーテンがあれば、「今誰かが着替えている」などと一目で分かります。こうした「小さな安心感」を積み重ねていきたいと考えています。
■「一生もの」。資格取得を奨励してキャリア支援
―女性社員の活躍について、今後の展望を伺います。
鈴木社長 今後は経理や事務だけでなく、現場への女性登用を積極的に進めたいと思っています。現場でのトイレの問題などを含め、乗り越えるべきハードルは多いですが、業界の活性化には現場での女性の活躍が欠かせないと感じています。
そのためにも、電気工事士や消防設備士など、現場に役立つ資格取得を全面的にバックアップします。現場系以外でも、建設業経理士などの取得を推奨していきます。この業界に限らず、資格というものは「何かあったときに自分を助けてくれる一生の宝物」ですから、ぜひチャレンジしてほしいです。
女性社員には今後も自分の時間を大切にしながら、健康で長く活躍していただきたいですし、会社もその環境を整備していきます。私が退任した後も、組織の理念として「女性が輝く会社」を目指してほしいです。
■「ライフステージ」に寄り添う支援を拡充したい
―鈴木課長が考える今後の展望をお聞かせください。
鈴木課長 現場で活躍する女性が増えていくと想定した場合、トイレはもちろん、シャワー室の整備や現場での暑さ・寒さ対策などが求められます。こうした環境を事前に整えて、女性社員を迎え入れることが重要だと思っています。
個人的には、不妊治療休暇の導入にも関心があります。入社した若い世代に長く活躍してもらうには、ライフステージに寄り添った制度が重要です。不妊治療は女性だけでなく、夫婦の協力が必要ですので、そうした理解を社内全体に広げていく取り組みも大切だと考えています。
■「ワーク・ライフ・バランス」が整う職場
総務部庶務課長 加藤さやかさん(49歳)
「入社して5年、事務などを担当しています。職場は居心地が良く、ワーク・ライフ・バランスの良さも魅力です。通院や家族の迎えなどの急な予定で中抜けしたいとき、社長が「いいよ」と快く認めてくれる柔軟な環境には、本当に助けられています。
会社でのお気に入りは、自由に選べるお茶セットとお菓子です。さまざまな種類のお茶を用意して、休憩時間にリフレッシュすることで、仕事も円滑に進みます。体調が良くないときに休める女性専用の休憩室があることも、社内での安心感につながっています。
株式会社鈴木電機吾一商会
業務内容:高圧変電設備工事・総合電気設備工事・防犯設備工事 など
社員数15人(男性12人、女性3人)平均年齢49歳
〒960-0719 福島県いわき市内郷綴町川原田165 Tel.0246-26-2442 Fax.0246-26-2452
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